ブルーノ・ジャコーザ

ブルーノ・ジャコーザ。

私にとって特別な生産者のひとりです。
彼のつくるワインはもっとずっと高い極みにありますが(あの品格、奥深さ etc,etc...)、
ジャコーザ本人はもう少しだけ、なんとなくですが、近くにいるような気がします。



いちばん最初にお会いしたのは、チェーザレにて、彼の誕生日パーティー。
チェーザレの息子、フィリッポの敬愛するジャコーザ。
私は当時、その偉大さも、その地位も何も分からず迎えていたけれど、
フィリッポの緊張し具合からとにかく、すごい人が来るんだ、と。


capotavola(お誕生日席)に座るジャコーザ。
親族ばかり、総勢20名くらいのパーティーだったと思うのですが、
とにかくもう常に仏頂面。
にこりともしない。


70いくつかの誕生日だったと思いますが、
ジャコーザひとり、ぶすーっとしたまま夕餉は進み、
私は緊張しながらも、お皿を下げたり、ポザーテを持っていったり。




印象的なのは、パン。


お皿の横に、パンくずが山のようにあったのをよく覚えています。
仏頂面でパンをこねこねこねこね…。


子供なら叱られているところですが。笑


フィリッポが、ジャコーザはいつもああやってパンで遊ぶんだよねーと言っていたのも覚えています。




そんな笑わないジャコーザ。
苦虫を噛み潰したような表情で、
料理も美味しいのか美味しくないのか、
とにかくむすーっとしているジャコーザ。





そんな彼が脳卒中で倒れ、もう長くないかもしれない、と聞いたのは帰国の2年程前だったと思います。


その後何度ももう危ない、と聞き、心配していたのですが、

帰国直前の冬、彼の娘ブルーナと、奥さまと一緒にチェーザレに食事に来てくれました。





常に、二代目、というのは重い重いプレッシャーを背負い込まなくてはならない存在で、
特に家族経営の多いイタリア、
ひとごとながら、何度もその苦悩を実際に見てきました。

その苦労の半分も私には実感できていないと思うのですが
きっと、何十年も、何百年も同じように、良いだの悪いだの言われて続いてきた伝統、
若いうちは何を言われても仕方がない。
それを年月とともに、昇華させ、
先代と同じように尊敬される存在になる。

時間や経験、育ててくれる人たち、環境、

今までずっと続いてきたことなんだなぁ、としみじみ思いました。



食事中、ジャコーザはにこにこで、
病気でもなんでも、この笑顔が見られてよかった、と思いました。
こういう言い方はとても難しいですが、
それでも。





ジャコーザ。


彼のワインの向こうにはちゃんと彼本人がいるような、
そんな気がする偉大なワインです。




cacciatoriには今、

Bruno Giacosa Extra Brut 2003


Barolo Riserva Falletto di Serralunga d'Alba 1990


がございます。
興味のある方はぜひ♪
grandi vini です。




Sito Ufficiale di Giacosa:
http://www.brunogiacosa.it/ITA/home-ita.html



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